スピーチアドバイザー、実行委員からのメッセージ
渋谷千聖(社会学部社会学科2015年3月卒業)

『経験するたび深まる想い』


 私は過去3回、留学生のスピーチアドバイザー(以下アドバイザー)として日本語スピーチコンテストに関わった。 1回目の参加動機は留学生の友達をつくりたいというものだったが、アドバイザーは留学生にとって“友達”というよりも “戦友”に近い存在ではないかと今になって思う。決められた練習場所、練習時間、練習方法を与えられるわけではない。 いつ、どこで、どのように練習していくのか、本番に向けて留学生と一緒に計画を練り上げていくのだ。 こうした二人三脚の作業を通して、留学生と仲良くなりたいという想いが留学生を支えてあげたいという想いに自然と変化していった。

 コンテスト当日、スピーチ前にそれぞれのアドバイザーがペア留学生の紹介をする時間がある。所要時間は1~2分程度のはずが、 ついつい語りすぎてしまうという現象がよく起きる。「留学生が主役なのか、アドバイザーが主役なのか」分からなくなるのだ。 これはアドバイザーがおしゃべり好きだからということではないと私は思う。
数週間、留学生と一緒に練習するなかで色々な思い出ができてくる。数週間、留学生の頑張る姿を間近で見守ることで彼ら/彼女らの魅力が沢山みえてくる。 そうした数々を会場にいる観客に伝えずにはいられなくなるのではないだろうか。それほど本番までの数週間が、留学生とアドバイザーにとって濃いものになってゆくのである。

 3回目のコンテストで私とペアだった留学生は惜しくも入賞を逃した。入賞者のコメントを聞いているとき本当ならば悔しいはずなのに、それ以上に入賞した留学生が嬉しそうにコメントを述べる姿に感動し涙してしまったことを覚えている。 練習期間中はペア留学生が入賞できるようにと全力を注いでいたにも関わらず、いざ本番になってみると、ペア留学生だけに限らず参加している全ての留学生が100%実力を発揮できるようにと願ってしまう。この不思議な感情はスピーチコンテストマジックによって引き起こされるものであり、実際に体験してみないと分からない感情だと私は思う。会場全体に留学生を見守る一体感ができあがるのだ。こうした雰囲気を体験することで、スピーチコンテストの目的は、競い合うことではなく留学生に素敵な思い出を作ってあげることなのかもしれないと考えるようになる。

 ここまで、私が過去3回日本語スピーチコンテストを経験し感じたことを述べてきたが、文章では伝えきることのできない物語、 関わってみなければ分からない面白さがそこにはあると思う。皆さんもスピーチコンテストに関わることで得られる、興奮、 感動、喜びの数々を自分自身で体験してみてはいかがでしょうか。