日本語スピーチコンテスト実行委員座談会

   (2016年10月24日 於ロイドホール第1会議室)

日本語教育センター事務局(以下事務局) 立教大学では、「留学生による日本語スピーチコンテスト」を2011年度から毎年開催しています。 本日は、実行委員として長くかかわってきた3名の方に集まっていただき、自由にお話ししていただく中で、これからコンテストに参加してくださる留学生、 実行委員になってくださる立教生へのメッセージが伝えられたらいいなと思っています。
 大野さんは、第2回(2013年度)から4回連続、実行委員長を含めてやってくださっています。 渡邊さんと後藤さんは第3回(2014年度)から3回連続ですね。ということで、大野さんの振りで、フリートークでいきたいと思います。


異文化コミュニケーション学部 異文化コミュニケーション学科 2017年3月卒業

〔きっかけ〕

大野 わかりました。テーマはあまりきつく縛りすぎず、自由に話せたらいいなと思うのですけれども、まず、このスピーチコンテストにボランティアとして参加することになったきっかけを聞きたいなと思います。
渡邊 2年生のとき、学部の授業で教授から、「土曜日、暇?」みたいな感じで言われて、じゃあ、みたいな感じで。私は、日本語学とか日本語教授法などに興味を持ち始めていた時で、留学生とも何かちょっとかかわれたらいいなと思っていたので、そのとっかかりとしてやってみました。だから1年生の時は知らなかった。
後藤 僕も1年生の時は知らなかった。もともと、留学生が日本語を一生懸命学んでいるというのがすごいことだなと思っていたので、教授に声をかけられて、そんな留学生たちが、日本語で自分の力で、しかも日本人学生のアドバイザーと1対1の二人三脚でスピーチをするというところにひかれて参加しました。
大野 わたしの場合、国際センターに国際交流ボランティアという制度があって、入学後すぐに登録しました。登録すると、メーリングリストで、いろいろなボランティア活動のお知らせがくるのですが、それで1年生の時から参加しました。

〔なぜ実行委員?〕

後藤 なぜ、(ボランティアの中で)実行委員を選びましたか。
大野 うん、アドバイザーという手もあったよね。
渡邊 以前から運営とか、そういうのをやりたがるところがあったからというのもあるし、実行委員であれば、留学生とだけではなくて、大学の事務スタッフとか、他学部の上級生や下級生とか、もっといろいろな人とかかわれるかなと思って。
後藤 自分も高校の時から、体育祭とか、実行委員としてかかわりたい方だった。大学生になって、ああ、懐かしいなと思っていたところに、留学生の日本語スピーチコンテストの話が来て、これは、もしかしたら近いんじゃないかと思って入ったら、思っていたとおりと。
渡邊 そう。あと、ああ参加したいです、と言って参加できる感じ。そんな重く考えない、すごく長い伝統があって、これはこうしなきゃいけない、みたいなしばりがない。やってみようかなという気持ちでやってみて、1年目も楽しかったなと思って。

〔実行委員の活動〕

大野 では、その中の活動で、実際にどんなことをやりましたか。
渡邊 わたしは、1年目に来賓・観客受付と表彰、2年目と3年目にその業務のリーダーをしました。
後藤 僕は、初回が、受付、観客投票回収、表彰で。2年目が副委員長だったのかな。(社会学部4年の)城戸さんが委員長をやって、サブ統括みたいな一番動き回って、上と下をつなぎましょう、というところにいた気がします。2年目、全然記憶ない。
渡邊 そうなんだよね。わりと短い間だからね。
大野 わたしは、1年目は、受付、観客投票回収、表彰。2年目と3年目に副委員長をやって、4年目は委員長になって。初めての人もいて、今までやったことある人もいて、何も知らないで初めてやるという後輩とかもいるけど、そういういろいろな立場の人と一緒にやる。
渡邊 で?
大野 何かこう、全体を見ながらというか、自分がちょっと責任の重いことをするというのは、すごく勉強になったかなと思って。ほかの後輩とか、初めて参加する人でも、結構楽しそうに、自主的に、積極的にやってくれたりというので、非常によかった。実行委員同士で話すときもすごく楽しい。わたしは、会自体も楽しいんだけど、準備している間にみんなでお弁当を食べながらしゃべったりとかも結構楽しいし、それで知らなかった後輩としゃべったりとかもあったので。あとは留学生が楽しそうに帰っていくところを見ると、ああ、やっぱりやってよかったなと思いますね。
渡邊 後藤 そうだね。
大野 うん。全体的に忙しい、楽しい感じね。
後藤 ああ、そうそう。本当、2週間に1回ぐらい集まるんだけど、何か忙しい感じはあって。
渡邊 いや、本当に楽しい。もう本当、難しいけど、楽しかったですよ。いろいろ考える、自分で考えて動かないといけないから、逆に楽しい。
後藤 終わった後の達成感もあって。
渡邊 あるね、うん。
大野 サークルじゃないから、内輪でやっている感じではないじゃないですか。あくまでも対外的に発信しているというところがある。実行委員が主体で運営しているから、来賓の方とか、普段かかわらないような方がいらっしゃったときに、見られていることですごく緊張します。
渡邊 学生がやっているからいいムードになるというのもあるよね。
後藤 あの会は学生がいないとつくれないとは思います。
渡邊 うん。
後藤 ワクワクしつつ、だからといって、手を抜くとかではなく。
渡邊 うん、そうよね。
大野 いいね。
渡邊 後藤 それが実行委員。

〔スピーチコンテストの思い出〕

大野 何か印象的だったとこととか、思い出とか。
後藤 思い出で言えば、自分はもらい泣きしやすいから。表彰式で、入賞した留学生が、ペアのアドバイザーのことを、「この○○さんがいてくれてここまで」みたいなことを言われると ...
渡邊 ああ、そう。「いてくれて本当によかった、ありがとう」みたいな。
後藤 それで、去年優勝した留学生 ...
大野 そう、誕生日だったんだよ。(受賞のスピーチで)「きょう誕生日なんです」って言ったら、どこからともなく、「ハッピーバースデー」の曲をみんなが歌いだして。あれはすばらしかった。表彰式の空気、いいよね。
渡邊 いいよね。
大野 好き。
渡邊 そう。
大野 非常にいい。
後藤 敢闘賞とかね。
大野 うん。今年、ラップやっていた人、すごく面白かった。
渡邊 後藤 すごく面白かった、そうそう。
後藤 やっぱり留学生のアイデアに。
渡邊 そう、びっくりする。トイレの話とか、リアクションの話とか。いや、自分たちで気づかないよな、みたいなことをね。
後藤 そう、気づかされるよね。内容も面白いしね。
渡邊 うん、面白いのよ、実際。どんどん、聞きたくなっちゃうね。実行委員、客として来たかったなとは思うね。ずっと聞いていたいとは思うね。
後藤 詰まっちゃう人とかもね、いるけど。
大野 うん、緊張する子がね。
後藤 それもまた。
渡邊 1回か2回ぐらい、打ち合わせとリハーサルでしかしゃべったことがない留学生なのに、頑張れってめっちゃ思っちゃう。
大野 うん。
後藤 感情移入しやすい。
渡邊 そう、しやすいね。緊張している様子とかもね、練習ブツブツしているところとかもね、たまに見るからね。
大野 留学生もしゃべりながら、ちょっと感情が入ってきて、ちょっとウルウルしながらスピーチをしている人もたまにいたりする。見ながらすごく泣きそうになって。


〔新たな発見〕

大野 次は、やってみて何か新たな発見はあった? ざっくりしているかな。
渡邊 やればわかる。
後藤 進研ゼミみたい(笑)。
渡邊 やればわかるというか、何でもやってみると楽しいなと。難しいけど、ということ。新たな発見は、留学生なりの目線とか感じ方とか、多分それは留学生がというわけじゃなくて、個人個人がなんだろうけど、例えば、日本のトイレがすごいだとか、日本人のリアクションが面白いだとか、例えば、スピーチをラップでしてみるとか、そういうのってこの場にいなければ聞けなかったことだから、あらためて留学生と普通に個人で話すときに、「日本のトイレが」とか、「日本人のリアクションってさ」とか、絶対に聞かないじゃない。
大野 スピーチだから言えることっていうのがあるんだよね。
渡邊 そうそう。礼儀の話だとか、そういうのって聞く機会がないとなかなか聞けないから、自分でその機会をつくるという感じ。私たちが、それをまたより多くの人々に伝える機会を持っている、場をつくっていると。
後藤 そう、つくりあげていますから。
渡邊 あとはもう、留学生にとっても多分、かけがえのない思い出になっているのではないかなと思います。
大野 あんなに、いろいろな人、いろいろな日本人の人を目の前にして、発信できるという機会ってそんなにない。逆にちょっと反省することもあって。例えば、留学生は、外国として日本に住んでいて、そこでちょっとずつためていったものが1つの形になってスピーチで出てくるから、ふだん1対1でしゃべっていたら、直接、1人の人を非難したりということは、あまりしないと思うんですけど、全体に対してのメッセージというので、例えば、日本のこういうところでちょっと自分はショックを受けたんだとか、こういう経験をしたというようなことをスピーチする方もいて、そういうのを聞いたときに、ああ、やっぱりそういうふうに思うけれども、でも、ふだんは言わない、ということもあるんだろうなとか。
渡邊 確かにね。
大野 そういう経験をしたときに、まわりにいた日本人とか学生は、どうしてそうだったんだろうとか考えると、自分もやっぱり反省するところがあったりするし、何かちょっと考えたり、よくないところは直さなければいけないかなというふうに思ったり。
後藤 このテーマとはちょっと変わってしまうかもしれないけれど、立教大学が留学生をたくさん受け入れるとなったときに、日本人の学生も、ただ外国人がたくさんきている、という意識にとどまっているのでは、大学としてまとまらないんじゃないかと思う。
大野 状態をつくるだけじゃ、やっぱりなかなか意識が。
渡邊 今は、完全に別々の空間だから。
大野 そういうことに興味がない学生のほうが多いじゃないですか。いい悪いは別としても、それほど国際交流だとか、外国人と一緒に生きていく、ということに興味がない学生にこそ、そういうことを知ってほしい。
後藤 増えただけでは、どうしようもない。
事務局 国際化の指標というのが、日本人の学生がどれだけ海外に行った、留学生がどれだけ来た、みたいな数でみられるのだけれど、そうではなくて、日本にいても外国の方を受け入れるということ、そのときのみんなのありようこそが国際化だと。
大野 後藤 日本にいても十分、チャンスはあるから。
大野 そうだなと思うようなヒントをもらった会でしたね、去年は。(普段一対一では聞けないことが)聞けるチャンスなんだけれど、宣伝はしていても、意外と、「立教はスピコンなんてやっているの」という人がいっぱいいて。知ったら、多分、みんなもっと来るんじゃないかなと。
後藤 巻き込めるとね。

〔夢はタッカーホール〕

後藤 もっと早めに言えよという話だけど、広報のところにも学生が入れるようになったら、もっといろいろな新しい方法というか、大学の事務局の方が思う理想の広報と、学生がどうすればもっと広まるのかという広報が混ざってうまいこといったら、もっと立教の日本人の学生も来やすいし、地域の方にももっと広がるしというふうになるのではないかなというのを。
大野 これは誰でも来ていいんですよね。地域の方々とか。
事務局 誰が来てもいいし、地域の方々にももっと来てもらいたい。
後藤 もう何なら本当に、次は6回でしたっけ。7回、8回、もう10回目ぐらいには、もう太刀川ではおさまらないぐらいの会に。
大野 タッカー(ホール)でやりましょう、タッカーで。
事務局 夢はそうなんです。タッカーでやる。
後藤 何ならもう、文化祭の1プランとして。
大野 緊張の度合が半端じゃない。
後藤 奪えるぐらいの。
大野 ね。

〔未来の実行委員へのメッセージ〕

大野 これから実行委員を担う学生にメッセージがあれば。
後藤 大学生活って何もしないでも4年間で卒業できちゃうけど、何か1個やり遂げましたって言えるものの1つとして、スピーチコンテスト。言い方は悪いかもしれないけれど、ほどよいと思うんです。すごく長いプロジェクトじゃないし、特に一人一人が負う責任というのもそこまで強くないから。
渡邊 みんなで協力してつくりあげるっていう感じ。
後藤 そうそう、みんなで1つをつくりあげるっていう達成感と、自分がここにかかわって、留学生や観客が満足した顔で帰っていってくれたというのを得る、ちょうどいい場だと思うので、それは、だから1回来て見てほしい。
渡邊 1年でいいからやってみてほしい。それほど拘束時間も、だらだら長いわけじゃない。あと、実行委員は英語を必要とする場面はほとんどありません。必要があれば、スタッフが助けてくれる。
大野 英語ができるっていうよりは、みんなで協力してバックアップしますっていうマインドがあるっていうことが留学生に伝われば、安心してくれるし、関係ない。
後藤 外国人が一生懸命、自分たちの言葉を学んで発表するという、すごくいい会なのに、英語というフィルターがかけられ、しりごみしてしまうのはすごくもったいないなと思います。
大野 むしろ、日本語でスピーチしたいって言って来ているんだから、日本語が全部っていう環境は留学生にとってはすごく刺激だし、チャレンジングで楽しいと思う。
渡邊 ね。「そのちょっと助けたいな」とか、「そういう機会をうまくつくりたいな」っていう人なら誰でも活躍できますと。
大野 何か発信して、それが聞いてもらえたっていうのって、多分、誰にとってもうれしいし、それを聞く側で入った人も、母語じゃないけど、でも、日本語っていう言葉で気持ちが何か伝わってくれば、文化とかに対する見方も何か得るものがあるかもしれないし、だから、やっぱり来ていただきたいですよね。
後藤 (3人とも卒業で)来年かかわれないから、来ていただきたい、しか言えない。
大野 来るほうに回る、みたいな。来られるんじゃない?土曜休みでしょう。
渡邊 私も土曜休みだよ。
後藤 集まる、みんなで。
渡邊 集まろう。

〔留学生へのメッセージ〕

大野 これから参加する留学生には?
渡邊 日本語、ここから頑張ればいいじゃない、って。スピーチコンテストから頑張ればいいじゃん、っていう人でもいいかなって。別にできなくても練習すればいいし、サポートはあるし、ね、思わない? 確実にね、いい思い出になるし。アドバイザーといい友達になる留学生ってすごく多いでしょう。そういうふうに日本人ともちろん、たくさん交流できるし、いい機会ですよね。
大野 人前で話すこともいい経験になる。
後藤 不安だったり、人前で話すのは嫌だなって思うこともあるかもしれないけど、立教生が、実行委員としてのバックアップはぬかりなくやるから、本当に飛び込んできてほしい。当たって砕けたらだめかもしれないけど。
渡邊 砕けてもいいよ。
後藤 もう何か、本当にそのぐらいの勢いで突っ込んできてくれても、5回分の経験と日本語教育センターや国際センターの方々と、アドバイザーがいて、準備というか、環境がすごく整っているから、何か飛び込まない理由がないというか。
大野 格好いい。「飛び込まない理由がない」。
後藤 やって損することは何もないと思うから。
大野 うん。こんなプログラムに参加できるというの、どこの大学にもある環境ではないので。
渡邊 そうそう!
全員 ぜひ参加してください!!


第6回コンテスト終了後の実行委員反省会にて