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講演会・シンポジウム

日本語教育センターシンポジウム2022

日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。

社会・コミュニティを変える力とは?
―21世紀の日本をけん引する立教型グローバル人材育成を日本語教育の視点から考える―

日  時 2022年7月9日(土)13:30~17:00
場  所 池袋キャンパスマキムホール(15号館)M302教室
(ハイブリッド実施)
主  催 日本語教育センター
登壇者 松井 秀征 (国際化推進機構長、法学部教授)
益本 佳奈 (本学卒業生、Fundacja SAKURA(さくら日本語学校)
                  教師)
中内 美沙 (立教大学社会学部現代文化学科4年)
小西 佐和子 (立教大学異文化コミュニケーション学部3年)
池田 伸子 (異文化コミュニケーション学部教授、
                  日本語教育センター長)
コメンテーター 中村 拓海 氏(株式会社Sociarise代表)
コーディネーター 丸山 千歌
(異文化コミュニケーション学部教授、日本語教育センター員)
司  会 鹿目 葉子(日本語教育センター教育講師、日本語教育センター員)
対象者 本学学部生・大学院生・教職員、一般
申し込み 【対面】要 *参加申し込みはこちら
【オンライン】不要 下記のURLリンク(Zoom)からご視聴ください。(対面・オンラインともに参加費無料)
URL https://rikkyo-ac-jp.zoom.us/j/84874125507?pwd=M2dNK0NmVDlyLzB4Vk9Cd3JKNWltdz09
ミーティングID:848 7412 5507
パスコード:073627

*シンポジウム冊子はこちら

レポーター:異文化コミュニケーション研究科 博士課程後期課程1年次 野口聡恵

学生レポート

皆さま、こんにちは。学生レポーターの野口です。今回の立教大学日本語教育センターシンポジウムは「社会・コミュニティを変える力とは?―21世紀の日本をけん引する立教型グローバル人材育成を日本語教育の視点から考える―」と題して開催されました。立教大学では「自ら考え(=思考力)、行動し(=変革力)、世界と共に生きる(=共感・協働力)」ことのできる「新しい」グローバル・リーダーの育成を目指してさまざまな取り組みが進められています。日本語教育センターは、これまでセンターが展開する活動を通して日本人学生と留学生が交流する機会を提供しています。
本シンポジウムでは、日本語教育センターの活動に参加した3名の日本人学生から、それぞれ活動を通して何を感じ、何に気づき、何を学んだのかについてお話しいただきました。そのうえで、外国人留学生のキャリア支援の専門家をお招きし、留学生のみならず日本人学生の学びにつながるような、今後の日本語教育センターが展開する活動の方向性について全体討議が行われました。


はじめに法学部教授、国際化推進機構長の松井秀征先生より、「立教大学が目指す国際化―『新しい』グローバル・リーダーの育成」についてお話しいただきました。立教大学では、リベラルアーツ教育を通して、「変化が激しく、先の見通せない世界において、なお世界を読み解き、そして世界に働きかけ、世界を変えていく力」を身につけた学生の育成を目指し、さまざまな国際化関連事業が進められていることを紹介いただきました。そのうえで、立教大学が育成しようとする「新しい」グローバル・リーダー像は、「幅広い知識や教養、そして批判的思考力をベースとして、複眼的な視点から物事の本質に迫り、チームの中での協働や意思疎通を図りつつ、問題の解決に向けて発信すべく、世界の中でその役割を果たすことができる人材」であると育成すべき人材像の共有が行われました。そのようなリーダーを育てるために、立教大学が用意する環境として、①学生を積極的に海外に送り出す取り組み、②外国からの留学生を積極的に受け入れる取り組み、③学内で学ぶにあたって、リベラルアーツ教育、複言語による教育をベースとし、常に異文化体験を得られるような取り組みという3つの取り組みを実行することが「新しい」グローバル・リーダーの育成を可能にすると述べられました。

つづいて、「海外へ行かないとグローバル人材になれないのか?―キャンパス内での経験を見直してみよう!」というテーマで在学生・卒業生3名を登壇者としてお招きし、日本語教育センターの活動を通して得たそれぞれの学びや気づきを、経験談を踏まえながらお話しいただきました。
1人目にご登壇いただいた益本佳奈さんは、異文化コミュニケーション学部を卒業後に異文化コミュニケーション研究科博士前期課程へ進学し修士号を取得、現在はポーランドのFundacja SAKURA(さくら日本語学校)にて日本語教師としてご活躍されています。益本さんからは、在学時に行っていた短期留学生や正規留学生が履修する日本語クラスでのTA(ティーチングアシスタント)活動を通して学んだことをお話しいただきました。中級クラスや上級クラスでのTA業務では、発表やレジュメのお手本役、トピックごとのイントロ、読解資料の語彙導入、ディスカッション参加などのさまざまな形で学生と関わりながらサポートを行います。益本さんは、高校生の頃から日本語教師になることを目指し、実際の現場を知りたいという思いから関わったこのTA活動のなかで、学生への言葉選び、学生が興味を持てるようなクラスへの引き込み方、日常で使える文脈の中で語彙を提示するといった導入の仕方に関して困難を感じたと当時の経験を振り返っていました。このような経験から、クラスは日本語を介した異文化交流の場であることへの気づきと、トピックに関する掴み→語彙フォロー→内容理解→ディスカッションの段階ごとにステップアップできるようなフローを準備するという授業での目標を達成するための道筋づくりを学ぶことができたとお話しいただきました。立教大学でのTA経験が、現在日本語教師として生徒と向き合ううえで欠かせない、教師からの一方向だけではなく、「学生の目線に立って一緒に学ぶ姿勢」を養うことに繋がったとのことでした。


2人目の登壇者、社会学部現代文化学科4年の中内美沙さんは、日本語スピーチコンテスト実行委員の経験をお話ししてくださいました。日本語スピーチコンテストは、立教大学の特別外国人学生、日本語科目履修中の正規学部生および正規大学院生を対象として、留学生の日本語学習の成果および日本での経験を披露し、本学の日本人学生等との交流の機会の増加を図ることを目的に毎年行われています。中内さんは、留学生が日本でどのようなことを感じているのかという「異文化体験が人々に与える影響」に関心を抱いていたことや、スピーチコンテストでのサポートを通して留学生の言語習得の支えになりたいという思いで実行委員として携わることを決めたとのことです。中内さんが2020年度に実行委員として、2021年度には実行委員長として関わった日本語スピーチコンテストは、どちらもオンラインでの実施でしたが、そのなかでオンライン開催による「交流の場」としての機能の難しさや、多くの文化、価値観を持つ人々が集まる場を組織する困難さを感じたと振り返っていました。また、困難を感じると同時に、それぞれがお互いをリスペクトする姿勢の大切さへの気づきを挙げていました。リスペクトの気持ちがあるからこそ、みんなで協力しあって良いイベントを作り上げることができたと述べていました。そして、スピーチコンテストを通して、異文化の中で生活している留学生の視点という自分とは異なる視点を通して見る世界への気づきとそこからたくさんの学びを得ることができたということもお話しいただきました。

3人目の登壇者は、異文化コミュニケーション学部異文化コミュニケーション学科3年の小西佐和子さんです。小西さんは、短期日本語プログラムでの日本語教育ボランティアの経験をお話ししてくださいました。短期日本語プログラムでは、日本語学習者との教科書に沿った会話練習やディスカッションのパートナーとして、またプレゼンテーションの聞き手として、日本語の授業に参加をします。小西さんは、日本語教育への純粋な興味とオンラインで気軽に参加できるということから、なにかに挑戦してみたいという気持ちで短期日本語プログラムへの参加を決めたとのことでした。この短期日本語プログラムでの活動を通して、自国の文化の説明をする際に、学習者から今までは考えたことのない視点からの質問をされたことで自分の知識不足を感じたことや、ボランティアであっても日本語を教える側と教えられる側として生徒との距離感が無くせず、同等の立場で交流できるまでに時間がかかったという困難点が挙げられていました。このような経験から、異なる文化背景を持つ生徒とのコミュニケーションは、新しい文化・自国の文化との共通点や相違点の発見や、日本の言語や文化が相手からどのように見えているかという学びと気づきに繋がったとお話しいただきました。最後に、教室は「言語を教える場」というよりも「異文化コミュニケーションの場」であるとして、生徒一人一人が背景に持つ文化観の知識・理解が必要だと感じたとこの短期日本語プログラムからの学びを振り返っていました。

次に、異文化コミュニケーション学部教授、日本語教育センター長の池田伸子先生より「キャンパスを“協創”の場に!―日本語教育センターは大学の国際化のために何ができるのか」というテーマの下、日本語教育センターのあり方についてお話しいただきました。池田先生は、立教大学の人材育成・キャンパスの国際化に、日本語教育組織であるからできることによって貢献することが日本語教育センターの使命であり大切な役割だとしたうえで、日本語教育センターが目指すものとして、共学、共働、協働のその先にある「協創」が掲げられました。これまでは、日本人学生にとっての留学生との関わりは海外留学プログラムの代わりの異文化間能力を養う機会というような位置づけをされていましたが、これからは、文化的多様性を学習リソースとしてとらえずに、そして「協創」を学生の能力やスキルとしてとらえるのではなく、日本人学生・留学生を共に学ばせ、共通のゴールに向けて協力しあう「協創」の場を展開していくことが今後の日本語教育センターの取り組むべきことだと示されました。そして、日本語教育センターが「協創」の場の展開を試みる中で、「協創」のマインドセットを学生にどのように植え付けていくかということ、学生に他人事ではなく、自分事として考えさせる仕組みなど「どのように協創をデザインするか」、そして「『創』をどう評価していくか」を検討していく重要性が述べられました。日本語教育センターが展開する活動に参加し、それぞれ自分の中に「協創」のマインドセットを持った学生が、自分を創り、そこから文化や空気を創り、自分のやり方で発信をし、周囲に影響を与えることで、時間をかけ、ゆっくりではあるが確実に立教から豊島区へ、そして21世紀の日本、世界規模で「文化を創る」ことに繋がるということに大きな可能性と意義を感じました。

休憩を挟んだ後半には、コメンテーターに株式会社Sociarise代表の中村拓海様をお招きし、全体討議が行われました。全体討議では、はじめに中村様より、2つのことが論点として共有されました。まず1つ目は、グローバルと聞くと、英語を身につけることばかりを意識してしまいがちですが、言語スキルを身につけることばかり意識せずに、他者とふれあう資質を身につけようとすることが大切であるとのことでした。どんな言語であっても、異なる他者と関わろう、相手を知ろうという資質が重要で、日本語でも世界の広さを知る道標となるのだということを示されました。2つ目は、自分と異なる他者との交流を面倒に思ってしまい、交流を避けてしまうこともあるかもしれないけれど、純粋に交流を楽しむことが大切だということでした。自分が人に影響を与え、また他者からも同様に影響を与えられるという関係が地球に広がっていく感覚を楽しもうということ、そして、地球規模で相手を知りたいと思い、伝えたいと願う欲求、この好奇心こそグローバル人材の資質だとして、この欲求を大学にいる時から養うことの大切さを述べていました。多様な人を知ることで自らの多面性を知る、自己理解を深めることは、本質的な豊かさの発見につながり、自分自身のキャリアの発展にも大きく貢献するだろうとお話しいただきました。

全体討議では、登壇者による学生視点でのキャンパス内での学びの経験や、松井先生と池田先生から挙げられていた今後の課題を掘り下げる形で今後の日本語教育センターが展開する活動の方向性、そして立教大学全体の方向性について、聴衆を含めて議論がなされました。議論の中で、どのように学生への働きかけや意識や意欲の喚起をしていくのか、学習成果をどのような方法で測定するのか、どのようなアプローチをしながら社会に関わっていくのかといった課題が共有されました。それに対し、日本語教育センター、立教大学、他大学、日本を事例とした国内の課題、そして参加者それぞれの視点からの問題解決のために向き合うべき課題が提起され、課題を多方面の知見を活かして議論する貴重な機会となりました。

今回のシンポジウムでは、日本語教育センターの展開する活動に参加した在学生・卒業生が登壇者だったということもあり、3名のお話を聞きながら、私もTA、スピーチコンテスト、日本語ボランティアとしてそれぞれの活動に参加した当時のことを思い返しながら、改めて自分自身の経験を振り返ることができました。登壇者として参加した学生一人一人の経験と私の経験を重ねてみると、共感することが多くありました。全員が共通して日本語教育センターの活動の中で、さまざまな出会いから異文化に気が付き、違いを認め合うことで互いに多くのことを学び、異なる他者との交流から、それまでの「当たり前」であった自分の思考・言動・行動に向き合い、批判的に振り返る姿勢を身につけることができたと思います。違った視点からの問いかけができる他者の存在と、そこからの気づきは他者との交流がなければ得られないものです。ですが同時に、それぞれの気づきの形も内容も、そこから得た刺激、その後の自己の変化も同じではないというところにおもしろさを感じました。「協創」のマインドセットは、一人一人の経験から、学生それぞれの色と形で作られていくものだと池田先生のお話にありました。「何を感じたのか」を大切にしながら日々、目の前の他者と、自分と向き合う中で「協創」は芽生えていくのだと実感しました。 そして何より、これらの経験ができるのは、学生の私たちに対して適切なサポートをしてくださる日本語教育センターの存在があるからこそです。改めて先生方の存在を心強く感じました。今後の日本語教育センターの在り方、そして自分自身の在り方を改めて考えさせられる有意義な内容でした。

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