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講演会・シンポジウム

日本語教育センターシンポジウム2023

日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。

正規学部留学生受け入れの新時代2
        ―21世紀を変えていく人材を立教大学から世界へ―

*シンポジウム冊子はこちら

日  時 2023年7月8日(土)13:30~17:00
場  所 池袋キャンパスマキムホール(15号館)M302教室
                    ※M301教室から変更になりました。
(ハイブリッド実施)
主  催 日本語教育センター
登壇者 松井 秀征 (国際化推進機構長、法学部教授)
荒川 章義 (経済学部教授、経済学部長)
池田 伸子
 (日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
西山 花音 (法学部法学科 3年)
大橋 勇斗 (経済学部経済学科 3年)
フレルホヤグ・ビルグーン (経済学部経済学科 1年)
チュオン・ロン・キム (経済学部ファイナンス学科 1年)
ナム・フォン・ミン (社会学部メディア社会学科 1年)
ヴー・チャン・ゴック・イェン (経営学部国際経営学科 1年)
コメンテーター ガルバドラッハ・トゴス氏 (新モンゴル小中高一貫学校 専務理事)
ナサンバヤル・ボロルマー氏
                   (新モンゴル小中高一貫学校 キャリア開発センター長)
ブ・ティ・ザン氏
                    (ハノイ国家大学外国語大学附属外国語英才高等学校)
コーディネーター 丸山 千歌
(異文化コミュニケーション学部教授、日本語教育センター員)
司  会 小松 満帆(日本語教育センター教育講師、日本語教育センター員)
対象者 本学学部生・大学院生・教職員、一般
申し込み 【対面】不要(直接会場へお越しください。)
【オンライン】要(下記URLよりお申し込みください。)
オンライン視聴
申込フォームURL
http://s.rikkyo.ac.jp/dae90e6

レポーター:異文化コミュニケーション学部 4年次 鈴木沙季

学生レポート

皆様、こんにちは。学生レポーターの鈴木沙季です。今回の立教大学日本語教育センターシンポジウムは、「正規学部留学生受け入れの新時代2-21世紀を変えていく人材を立教大学から世界へ―」をテーマに開催されました。リベラルアーツ教育を重視する立教大学では、多様性を追求するための新しい外国人留学生受け入れ制度「RIKKYO STUDY PROJECT(RSP)」を、昨年よりスタートさせました。これを受けて、本シンポジウムでは、RSPの理念や目指すところ、留学生を受け入れる学部のもつ期待などを先生方よりご共有いただきました。そのうえで、RSPのうちのNEXUSプログラムの学生とチューター、1学期目の全カリ科目に参加した学生に、プログラムや科目を通して得た学びについて発表していただきました。つづいた全体討議を通して、本学における多様性を追求するプログラムの先には、協働学習をはじめとする多くの交流の機会によって、留学生の学びだけではなく、日本人学生の将来の展望にまで相互作用で影響が生まれ、大学生である自身と社会のつながりにも強い意識が生まれるということが分かりました。本学の目指す「自ら考え、行動し、世界とともに生きる」新しいグローバルリーダーの育成を背景に、大学生としての本学での学びをどのように社会へ還元させるのかを考える貴重な時間となりました。

はじめに、法学部教授、国際化推進機構長である松井秀征先生より、「立教大学が目指す『新たな』正規学部留学生獲得戦略」として、多様な正規学部留学生を受け入れるための具体的な方法についてお話いただきました。特に、①スーパーグローバル大学創成支援事業、②Rikkyo Study Project (RSP)事業、③大学の国際化関連事業、④大学の世界展開力強化事業の4つの事業があるうち、②RSP事業に関して、詳しくご紹介いただきました。RSP事業では、従来通りの専門的な日本語能力を持つ留学生の受け入れ(外国人留学生入試)に加えて、日常生活を送る程度の日本語能力を持つ留学生が、日本語を集中的に学びながら学部での学びを日本語中心で行うNEXUSプログラムと、日本語能力は問わず、高い英語能力を持つ留学生が英語中心に専門的に学ぶPEACEプログラムという、3つの受入方法の概要についてご説明いただきました。従来の受入制度では漢字圏からの留学生に偏りが生じていたことを受け、日本語能力のハードルを下げたプログラムの設置によって、漢字圏以外の多様な国・地域からも留学生を受け入れることを狙いにしていると述べられました。

続いて、NEXUS生を受け入れている学部を代表して、経済学部と異文化コミュニケーション学部がもつ多様化への期待について、それぞれの学部における先生方よりご共有いただきました。

まず、経済学部教授、経済学部長である荒川章義先生より、お話を賜りました。経済学部では、男女比率は偏りが小さくなっているものの、正規留学生のほとんどが中国と韓国出身の留学生であることから、「多様性(diversity)がなさすぎる」という現状についてご説明いただきました。そのようななかで、NEXUS生を受け入れることによって、「経済学部に『多様性』が持ち込まれることを期待」していると述べられました。また、経済学部には多様なバックグラウンドを持つ外国人教授による「英語『で』学ぶ」科目の設置や、夏季・春季休暇中の海外プログラムによるさまざまな研修を通して、国際化への対応を進めていることについてもお話いただきました。最後に、経済学部公認の学生団体「留学生サポートグループ Solidarity」の活動による留学生を孤立させない取り組みをご紹介いただき、経済学部の留学生受け入れが招く「多様性」への期待を述べられました。

そして、異文化コミュニケーション学部教授、日本語教育センター長である池田伸子先生からは、日本語教育センターとしての役割と併せて、お話を賜りました。まず、大学の国際化を進めていくうえで、ただ多様なだけでは足らず、「優秀で多様な学生」を受け入れるために、日本語能力には偏らない入試が必要であると強調されました。さらに、大学全体として継続的に成長するためには、「学部と密接に連携した日本語教育」と「個性を生かした協働の仕組み」が特に重要であることを述べられました。これに基づき、NEXUSプログラムには、①「専門の日本語 with チューター」、②「全カリ科目『多文化共生社会と大学』」の履修、③「スピーチコンテスト、相談室」への参加といった、交流を促す「3つのしかけ」があることをご説明いただきました。NEXUSとは「Next Generation for Unity & Solidarity」から由来しています。NEXUS生同士の交流だけでなく、各学部からのチューターとの交流から学部生としての「つながり」をもち、全カリ科目で出会うクラスメイトとの交流からさらに「つながり」を広げるなど、この「Unity」と「Solidarity」を意識した取り組みによって、NEXUS生に「立教大学に来てよかった」と思っていただきたいという願いをご共有いただきました。

休憩を挟んだ後半には、「NEXUS生×日本人学生 ―学生たちは何を感じ、何を学んだのか」と題し、パネルディスカッションを行いました。まず、4人のNEXUS生に第1学期で学んだことについてご共有いただき、続いて2人の日本人学生に留学生との関わりから学んだことについてご共有いただきました。その後、海外からオンラインでご参加いただいた3名のコメンテーターの方々からお言葉を頂戴し、質疑応答を行いました。

一人目の登壇者は、経営学部国際経営学科1年のヴー・チャン・ゴック・イェンさんです。チャンさんは、第1学期を通して、人間関係を構築し、アカデミックスキルを身につけられたことが良かったと述べられました。チューター学生やクラスメイトだけでなく、寮でも友達をつくり、日本語の授業では経営に関する図書を分析するなど、さまざまな初めての体験をしたチャンさんから、最後に「人生は一度きり」という言葉を、私たちにお伝えいただきました。

二人目の登壇者、経済学部ファイナンス学科1年のチュオン・ロン・キムさんは、第1学期を通して身につけた日本語能力についてお話されました。外国語を理解しようとするとき、翻訳を試みようとすることが多いですが、個々の単語の翻訳は出来ても、それでは文章全体の理解は難しいと学んだようです。ここから、知識を取り入れ、考えを構築し、述べることができる「日本語のための『第二の脳』」と、「翻訳による意味の喪失」から重みが失われることを避けるため、外国語をありのまま受け入れるということを身につけたとのことでした。最後に、この日本語能力向上の背景には、カリキュラムや先生方のサポートなど、それに適切な環境があったからだと述べられました。

三人目の登壇者は、社会学部メディア社会学科1年のナム・フォン・ミンさんです。3つの活動に分けてお話いただきました。まず、日本語の授業について、学んでいて難しいと思った科目も、社会学の学びに役立っていることが分かったようです。次に、全カリの「多文化共生社会と大学」について、「こんなにむずかしい授業があるの!?」と最初は思ったようです。それでも、日本人学生のサポートを受けて、社会問題のテーマも「やさしい日本語」で言い換えて学ぶことができたとのことでした。そして、課外活動について、スピーチコンテストを通して人前で発表することに自信がついたり、野球部の応援に出向いたりと、さまざまな活動を通して、「立教大学」や「日本社会の一員になりたい!」「日本社会を多文化社会にしたい!」という思いが芽生えたとのことでした。

NEXUS生最後の登壇者は、経済学部経済学科1年のフレルホヤグ・ビルグーンさんです。ビルさんは、大学での学びから日本語能力を向上させ、また、「何に向かって勉強しているのか」を考えるようになったといいます。寮での生活では「私はこの世界の『一部分』」なんだという異文化理解の学びがあり、コミュニケーションをとって良好な関係を構築できたようです。そして、チューター学生がいたおかげで、専門知識を獲得したり、学部生としての生活を理解できたとおっしゃいました。また、仲良しの先輩という関係性によって、聞きたいことが聞ける相手を見つけられたようです。

続いて、日本人学生一人目の登壇者、経済学部経済学科3年の大橋勇斗さんから、チューター学生としての学びとそこから生まれた将来の理想像について、お話いただきました。まず、チューター活動を通して、質問には「伝わりやすく正しい」答えで、相手のために答えることを学んだとのことでした。そして、「国際交流」に重要なのは言語力ではなく、コミュニケーション力であり、「国際交流」のハードルは思うほど高くないと述べられました。最後に、留学生の自主性から「継続して学ぶ」姿勢と、相手の求めることを理解し、「分かりやすく」解決することを理想に挙げ、「対話力」と「課題解決能力」を身につけたいとおっしゃっていました。

日本人学生二人目の登壇者である法学部法学科3年の西山花音さんは、全カリ科目「多文化共生社会と大学」を履修して学んだことをご共有くださいました。短期留学で行ったハワイの多様性を見て、日本の多様性の現状について気になったことと、「異文化交流」を日本語で行えるということが、履修のきっかけだったとのことでした。ディスカッションやグループワークが多い本科目では、マジョリティとしての日本人学生側の意見とマイノリティとしての留学生側の意見があるように、会話内に多様性があったと述べられました。やさしい日本語を使用する際には、話すときと聞くときで意識を変え、留学生とのコミュニケーションではどのような態度が必要なのかを考えるようになったとおっしゃいました。本科目を通して、多文化共生社会を実現していく存在として自覚し、両者の視点で考えるようになったこと、また、コミュニケーションのあり方を考え、他者への思いやりをもつことを学んだとのことでした。

全6名の学生からお話をいただき、これを受けて、3名のコメンテーターの方よりお言葉を賜りました。
まず、ハノイ国家大学外国語大学附属外国語英才高等学校のブ・ティ・ザン先生よりお話をいただきました。学生たちが成長していて感動したとおっしゃり、NEXUSプログラムで良かったというお言葉をいただきました。
続いて、新モンゴル小中高一貫学校で専務理事を務めるガルバドラッハ・トゴス先生も、日本語能力の成長に感動したとおっしゃっていました。また、ご自身の日本での経験などを振り返り、日本人にも影響を与えるプログラムであるから、外国人学生だけでなく日本人学生とも交流してほしいとお話いただきました。
最後に、新モンゴル小中高一貫学校キャリア開発センター長のナサンバヤル・ボロルマー先生よりお話いただきました。学生たちのさまざまな経験をお聞きになり、チューター学生の存在も、友達になった日本人学生の存在も大きく、大学生活において関係は続いていくだろうと述べられました。ともに学ぶプログラムを経験し、ともに生きる人材となることを期待しているとおっしゃりました。

そのあと、全体討議にて、NEXUS生の第2学期への考えをお聞きしました。学生たちに共通して、第1学期における先生方や日本人学生とのつながりは、「家族」のようなつながりで、母国を離れている学生にとっては大きな存在であったようです。しかし、第2学期には、大学生として、より自主的に学ばなければならないことを考えると、それに対して意識が高まる学生もいましたが、不安に思っている学生もいるようでした。フォンさんは、第1学期にあった困難やこれからの学部での専門的な学びが不安でも、あきらめずに頑張りたいと述べられました。また、立教大学を卒業後、何をしたいかという質問に対し、四者四様の答えがあり、母国に帰国し、自分の夢をかなえたり、母国の力になりたいと意気込む学生もいました。

今回のシンポジウムにて、先生方や学生のみなさんのお話を聞き、私は改めて「異文化理解とは何か」を考えていました。これは、私が立教大学に入学するときから考え続けている問いです。松井先生のお話にあったように、立教大学の中で他者とかかわり、同時に立教大学の外で他者とかかわる機会をいただけていることは、非常に貴重なことであると感じます。他者を理解しようとすることは、自分自身をも理解しようとすることであると考えています。そしてまた、自分自身を新たに理解することで、他者に対する理解もさらに深まり、広がります。今回、自身の経験を発表してくださった学生のみなさんが、他者とのかかわりを通して、自分の将来像や自身に必要なスキルを自覚していったように、目の前の他者に一生懸命に向き合い、自分自身に出来ることを最大限に努める姿勢をもつことが「異文化理解」の促進には欠かせないのではないでしょうか。それをもって、「多様性」を追い求めることができるのだと思います。今後、立教大学がさらに多様性あふれる場所へ、変わるためのヒントが散りばめられた時間となりました。

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