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講演会・シンポジウム

日本語教育センターシンポジウム2020

日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。

正規学部留学生受け入れの新時代に向けて-海外の中等教育の事情に学ぶ-

日  時 2020年12月12日(土)14:00~17:00
場  所 オンライン(Zoomにて開催)
主  催 日本語教育センター・国際化推進機構
パネリスト ・丸山 千歌
 (日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
・ベトナム:タン テイ ミビン
 (ベトナム国家大学ハノイ校外国語大学 日本言語文化学部 講師
・インドネシア:ルッシー ノヴァリダ リドワン
  (ジョグジャカルタ第一国立高校教員・インドネシア全国中学校・高校日本語教師会会長)
・モンゴル:ガルバドラッハ トゴス
  (新モンゴル学園 専務理事)
・池田 伸子
 (国際化推進機構長、異文化コミュニケーション学部教授)
コーディネーター 丸山 千歌
(日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
司  会 藤田 恵
(日本語教育センター 特任教員 日本語教育センター員)
対象者 本学学生、教職員、校友、一般
申し込み 要 (参加費無料)

*シンポジウム冊子はこちら

レポーター:異文化コミュニケーション研究科1年次 下屋敷 胡乃美

学生レポート

はじめまして。学生レポーターの下屋敷胡乃美です。今回で第9回を迎える立教大学日本語教育センターシンポジウムは、「正規学部留学生受け入れの新時代に向けて-海外の中等教育の事情に学ぶ-」というテーマで行われました。今年度は新型コロナウイルスが世界的に流行してしまったことで、立教大学の在籍学生はもちろん新入生は大学で学ぶことができない状態になり、立教大学に留学する予定だった留学生も自国で授業を受けたりなどそれぞれが大変な思いを経験した1年になりました。そのような中で立教大学もオンライン授業を行うなど様々な工夫を求められる1年になったと思います。しかしこのような経験をしたことでこれからより柔軟に変化をしていく立教大学になるのではないかという期待感も感じました。そのような国際化の進む立教大学で学んでいく、新しい留学生たちがより満足した大学生活を送るために何が必要なのかということや立教大学が目指していく留学生受け入れの形を考えていく上で、実際に海外の中等教育で日本語教育に関わる先生方にそれぞれの学校の日本語教育の実態とこれからの展望について伺うことができ、とても貴重な経験になりました。
今回のシンポジウムはオンラインで行われました。国際センター副センター長であり経済学部教授の厳成男先生の開会の辞の後、パネリストである各地域の日本語教育に携わる先生方3名からご講演をなさり、その後本学の正規学部留学生受け入れの新時代について池田伸子先生と丸山千歌先生がご講演をなさいました。全体の講演が終わった後、全体討議が行われました。


〔1つ目の講演〕
まず1つ目の講演では、ベトナム国家大学ハノイ校外国語大学日本言語文化学部講師のタン・テイ・ミビン先生より「ベトナム中・高校における日本語教育事情について」というテーマのもと、ご講演くださいました。
ベトナムの日本語教育事情の概観としては、ベトナムの中等教育に第一外国語として日本語が取り入れられるという計画が出され、国際交流基金とベトナム教育訓練省が協力し日本語専門家の派遣や教科書作成等への協力、現地での教育研修の実施などが積極的に行われてきたそうです。実際に2015年には6万人程度だった日本語学習者数が、2018年には17万人を超えるなど、日本語学習がベトナムの世論の関心をひいている分野であるそうです。現在では初等教育、つまり小学校に日本語教育を取り入れる実践も行われていることが分かりました。
そのような中で留学を望む学生の傾向としては経済や言語などの社会系に関心を持つ日本語履修学生が多く、2018年の調査では約40%の学生が留学を希望していることが示されていました。そのような学生が抱える日本の大学への進学の課題として3つが挙げられていました。1つ目が経済的側面、2つ目が日本語能力的側面、そして3つ目が自立的側面における問題です。このような課題点を解決するために、日本の大学が特に教育における柔軟性について考えていく必要性があることや留学生が生活において安定的な人間関係を築けるようなサポートが必要であるということが指摘されていました。
日本への留学生は日本語で学びを得るという難しさと共に、対人関係においても不安を抱えていることをさらに考えていく必要があると感じ、そのような不安を少しでも減らせるようなサポートを本学では改めて考えていく必要性があると思いました。

〔2つ目の講演〕
2つ目の講演では、ジョグジャカルタ第一国立高校教員でインドネシア全国中学校・高校日本語教師会会長を務める、ルッシー・ノヴァリダ・リドワン先生から「ジョグジャカルタ市立第一高校における日本語教育の達成度」というテーマについてお話しくださいました。
現在インドネシアは2019年の調査によると日本語学習者の多い国第2位に位置するほど学習者が多いそうです。その中でも中等教育における日本語学習者が最も多いといいます。そのような中等教育での問題について4点が挙げられていました。①学習時間の減少、②中等教育での日本語のレベルが低い、③高校で日本語を学ぶ生徒が大学ではほかの学科に入る、④専門高等学校の日本語カリキュラムがない、という4つでした。また、インドネシアにおける教師の日本語能力はN3レベルが最も多いということから、様々なワークショップを行うなどの工夫をされていることも紹介していただきました。今後もインドネシアにおける教師の日本語力向上に役立つ活動とともに、学生の日本語力向上を目指す活動をしていきたいと話されていました。インドネシアでも日本語学習の継続という問題があるといことが確認でき、学習の継続ができる環境作りを日本の大学も含めてしていけるような工夫が必要であると感じました。また本学がインドネシアにおける日本語教師の育成にも貢献していることが分かり、これからも様々な国で取り組んでいくべき課題であると考えました。

〔3つ目の講演〕

3つ目の講演では、新モンゴル学園で事務理事を務めていらっしゃるガルバドラッハ トゴス先生が「モンゴル初の日本式学校としての語学教育の取り組み」というテーマで、主に新モンゴル学園についてのご講演をなさいました。
新モンゴル学校は日本式の学校として設立されたため、優秀な卒業生を日本に送り留学させ、将来的にはモンゴル国の発展に貢献してほしいという方針を掲げて教育に携わっているそうです。2000年からの活動では、日本へ留学するために高校3年間で“大学の講義を受けられる”レベルの日本語になるようなカリキュラム作りを行うなどの工夫をされたそうです。そして2006年からは、中学一年生からの日本語教育を実践し、日本への留学前に日本で1ヶ月間の「合宿」を行うなど、学生が実際に生活する前に一度体験できるような活動も取り入れるようになったそうです。このような様々な工夫から2011年から2015年には多くの日本留学生が出たそうです。ここで実際に留学をされた学生からの意見が紹介され、まず初めに大学になれる事への難しさがあることが言われていました。また、日常的なトラブルを抱える学生も少なくないため、新モンゴル学校では提携先に個人メンター制度を設けてもらえるような要請をしているそうです。現在でも様々な工夫を通し、日本又は海外への留学生を増やしており、卒業生の2割から3割がJLPT3級を取得しているという成果が出ているそうです。今後は生徒主体の学校を目指し、生徒のニーズやレベルに合わせた語学教育を行える環境を整えていきたいとおっしゃっていました。

〔4つ目の講演〕
4つ目の講演では、国際化推進機構長で異文化コミュニケーション学部教授の池田伸子先生が「正規留学生受け入れの新時代-ダイバーシティからインクルージョン、コラボレーションへ」というテーマでご講演をなさいました。
現在新型コロナウイルスの影響で、先が見えない中でグローバル化が進み、様々な変化に対応していかなければならないという状況に置かれています。そのような変化の中で、私たち自身にも“変化を恐れないこと”が求められていると述べられた上で、立教大学の役割も変化してきていると話されました。特にコミュニケーションにおいて必要とされるソフトスキルを大学の中で育成することが重要であり、21世紀の課題に果敢に取り組んでいける人材を立教大学で育成していかなければならないと述べられました。
具体的に立教大学では立教グローバル24やTGU(トップグローバルユニバーシティ創生事業)という形で新たなグローバルリーダーの育成に取り組んでいます。そこでは①国境をこえて流動する社会に柔軟に対応し、新しい仕組みを生み出していく変革力、②豊かなコミュニケーション力で異なる文化・習慣をもつ人びとと共に課題を解決する共感・協働力、③地球規模の困難な課題に向き合い、問題の本質を理論的に解明する思考力、という3つの力を備えたグローバルリーダーを立教大学の4年間で育成することを目指しており、世界中に立教大学の理念を共有したグローバルリーダーを広げていこうという思いで教育に取り組んでいると述べられていました。
このような人材を育成するために立教大学では、外国人入試の見直しや入学後の学びのスタイルを限定せず、色々な地域からの留学生を受け入れる準備を進めています。このような入試で入ってきた学生も含め、特別なプログラムの学生という認識ではなく立教大学の学生であるという意識を持ち、立教大学に通う学生全員が自分の学びに沿って4年間学んでいくような制度を目指していると話されました。
立教大学では、様々な背景の学生を受け入れながら、多様性のその先にある本当の意味での学生同士のコラボレーションを実現することを目標としています。その最初の立教大学への着地という部分を大切にしていきたいと話され、具体的には、所属学生と連携した日本語プログラムの展開や、寮生活における学びについて述べられました。最後に、21世紀に世界中で必要とされるグローバルリーダーを育成するために、立教大学でしっかり4年間手厚くサポートしていくと話されました。

〔5つ目の講演〕
5つ目の講演では、日本語教育センター長で異文化コミュニケーション学部教授の丸山千歌先生が「正規学部留学生受け入れの新時代-インクルージョン、コラボレーションの実現に向けた日本語教育-」というテーマでお話しされました。
現在立教大学には、様々な形で留学をしている留学生が1000人ほどいます。今回は、その中で正規学部留学生に焦点を当てお話をされていました。2015年当時は、日本語母語の学生と同等の日本語能力が留学生には求められ、全学共通プログラムの第二外国語に日本語が設置されているものの、1つのレベルしか存在しない状態でした。しかし2016年からはレベルが3つに設定され、プレイスメントテストの結果、あるレベルに満たしていない学生については必ずこの日本語科目を受講するという方法が進められています。この方法に加えて、これから立教大学では新しい留学生受け入れをしていくために、①英語で学位を取得するプログラム、そして②日本語力強化プログラムを用意することを現在検討されているそうです。
日本の大学生活のための日本語教育について、これまで主に①中級から上級への壁、②アカデミックジャパニーズについての議論が盛んに行われてきましたが、これからの新しい留学生受け入れのためにはこれらの視点だけでは不十分だと考えていることを話されました。これからは留学生の実際の生活においての安心を確保することや卒業後の進路についても、大学の4年間で考えることができるようにという視点も取り入れながら、学部の学びにしっかり取り組んでいけるような日本語教育を目指していくと述べられました。
立教大学では、全体としては1学期目に集中日本語プログラムなどでそれぞれの学部の学生としての生活を整えていきながら、その中の日本語をサポートしていくことが重要であるとお話しされました。具体的には、学部との連携やチューター活動を通し、専門分野を学ぶ入り口に立つことを意識し、先ほどの高いハードルをしなやかに乗り越えるためのメタ認知的ストラテジーや社会的ストラテジーを組み込み、留学生が自然に学びに向かっていけるようなサポートをしていくということをご説明されました。そして、このようなサポートを含む科目を新しい立教大学の姿に近づけていきたいということを話されました。
現在までに、学部との連携が進み、各学部で期待されていることも具体化されてきているそうです。チューターと連携をしながら留学生が学部に着地することを目指していくことを検討中であり、日本語力が多様な留学生を受け入れることが立教の学びを豊かにしているという成果をどのように出していくかという段階までの進捗状況をご報告なさいました。

〔最後に〕
今回、様々な地域で活躍されている先生方のご講演からそれぞれの地域の日本語教育の現状と展望について、そして立教大学の目指す留学生受け入れの形を学ぶことができました。留学生が安心し、立教大学で充実した学びを得るために、在学生としてどのようなサポートができるかということを改めて考えることができました。留学生から私たち日本語母語の学生が学べることも本当に多く、大学生活がお互いにとってかけがえのない経験になることは間違いありません。これからもたくさんの留学生たちと共に助け合いながら学んでいけることを楽しみにしています。

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