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講演会・シンポジウム

日本語教育センターシンポジウム2014

日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。

大学の国際化と大学評価~日本語教育プログラムの貢献をどう評価するか~

日  時 2014年12月6日(土)14:00~17:00
場  所 池袋キャンパス 太刀川記念館3階多目的ホール
主  催 日本語教育センター
講演者 長尾 眞文氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科環境学研究系サスティナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム 特任教授)
指定討論者 小澤 伊久美氏(国際基督教大学 日本語教育課程 課程准教授)
池田 伸子(前日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部長)
コーディネーター 丸山 千歌(日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
司  会 金庭 久美子(日本語教育センター員、ランゲージセンター教育講師)

*シンポジウム冊子はこちら

レポーター:異文化コミュニケーション研究科言語科学専攻1年次 三浦綾乃

学生レポート

こんにちは、学生レポーターの三浦です。私は今回、日本語教育センターが主催するシンポジウム「大学の国際化と大学評価 日本語教育プログラムの貢献をどう評価するか」に参加しました。このシンポジウムへ参加して、私は「プログラムの評価」という視点から大学の国際化に向けた日本語教育プログラムのあり方について考えることができました。シンポジウムはまずプログラム評価の専門家である長尾眞文先生の大学評価についての講演から始まりました。そしてそのプログラム評価を立教大学の日本語教育とどう関連付けてゆくのか、池田伸子先生と小澤伊久美先生の指定討論、最後に会場全体での討論という流れで進んでゆきました。現在大学院で日本語教育を学ぶ身として、大学の国際化とそこで日本語教育が果たす役割を考えるうえで、大変有意義なシンポジウムに参加させていただいたと感じます。なのでこのレポートでは、そんなシンポジウムの様子をお伝えしたいとおもいます。

第1部は東京大学大学院に所属されている長尾眞文先生の講演でした。テーマは「大学の国際化と大学評価」で、評価のプロフェッショナルである長尾先生からまず評価実践の枠組みと評価の手法に関する理論的な話がありました。「良い評価」とはどういうものか、仮にそれを「役に立つ評価」とします。すると現在日本の大学や行政で行われている評価アンケートや評価レポートは、やるだけやるがそれを使って何もなされていない状況が多々あるそうです。そこで長尾先生は、「評価をどのように活用するか考えてから評価のシステムを作る、あるいは評価のシステムを理解してから評価することが重要だ」と述べられました。

そして講演では3つの異なる視点から見る大学評価についてお話ししてくださいました。3つの異なる視点というのは①日本語教育プログラムのインパクト評価、②日本語教育ユニットの役割に関する事業形成評価、③大学の国際化と日本語教育プログラムに関する事業評価、の以上3点です。

まず①の「日本語教育プログラムのインパクト評価」ですが、これは授業やプログラム、プロジェクトなどの成果の検証と、その成果を事業資金提供者・関係者へ説明するための評価のことです。やり方としては評価者を内部で行う方法と外部から専門家を呼ぶという方法があります。評価では、結果の有用性を獲得することが課題となると長尾先生は言及され、評価の有用性を左右する条件として、評価結果を活かせるような評価システムと、評価の実施と結果の検討に関する事前の組織的合意、そして日本語教育プログラムの学内認知の必要性についてもお話しされました。

②の「日本語教育ユニットの役割に関する事業形成評価」は事業企画・組織構成・実施デザインの明確化と事業設計の再構築を目的とした評価です。つまり、日本語教育プログラムのデザインや構成をもう一度見直すための評価で、見つかった問題点は改善し次につなげてゆこうとするものです。評価は日本語教育ユニットに関するロジック・モデルという手法を用いて、プロジェクトに携わるユニット教員の間で行われます。この評価にも、学内の評価システムや国際化に関する共通の理解や認識が必要であり、さらに日本語教育担当ユニットが実施する日本語教育プログラムを、他の国際化関係部局の方に観察者、または参加者として実施過程を見てもらうことが必要で、そうすることで評価の有用性が得られると述べられました。

 ③の「大学の国際化と日本語教育プログラムに関する事業評価」という視点では、より新しく広い枠組みを作る、つまり新規事業構想・企画の作成を視野に入れた評価が挙げられました。これは日本語教育ユニット教員と学内の国際化関係部署のメンバーが中心となり、学内のニーズ調査、文献調査、他大学先進事例の訪問調査などを通して行うものです。この評価の有用性を確立するためには、「大学を挙げての国際化」が必要だという全体の認識、留学生のニーズを意識した日本語教育プログラムのグローバル人材育成教育プログラムにおける位置づけ、そして大学の国際化を自主的に追及するための戦略決定に関する組織決定が必要になるということもお話ししてくださいました。

本講演では、より広く学内での理解を得るための様々な評価の使い方があるということを長尾先生から教えていただきました。最後に先生がネルソン・マンデラの言葉を借りておっしゃった「相手の言葉で話せば、相手の心に届くことができる。大勢の留学生に来てもらうためには留学生が来たくなるようなプログラムを作り、発信してゆくべきだ。」という趣旨の言葉が大変私にとっては印象深く、自分自身学生という立場ではありながらも、今後の立教大学における日本語教育センターの役割と貢献について考えさせられました。有用性や客観性、正確性がある評価を行い、外部へ発信することで、立教大学の日本語教育プログラムの重要性をアピールできれば、「立教大学で勉強したい」という留学生が増えるのではないかと私は考えました。

 長尾先生の講演に続く第2部では、「日本語教育プログラムの貢献をどう評価するか」というテーマで池田先生と小澤先生が話されました。

 前日本語教育センター長である池田先生は、立教大学の国際化というコンテクストの中で立教大学の日本語教育センターが現在置かれている状況についてお話ししてくださいました。日本語教育センターには大学の国際化を担うため、フリー・ムーバーの受け入れやより充実した日本語教育プログラムの開発などの様々な可能性が秘められていることを述べ、それらが実行されるためには大学の執行部の柔軟な発想、運営体制の整備、チャレンジする勇気が必要だと話されました。そして大学の執行部を動かすためには日本語教育センターの認知度を高める必要があるとして、認知度を高めるためにはどのようにすれば良いか、長尾先生との活発な討論が行われました。討論ではこの「学内における日本語教育センターの認知度向上」と「大学執行部と渡り合うこと」は密接に関係しているとされ、長尾先生から「国際の日本化」をするセンターもあっても良くて、そこから日本のファンを増やせる、という興味深い案が出されました。さらに、日本語教育センターの存在や取り組みを実際の現場にいる人が主張し続けることが必要だという案も出ました。

  続いて、国際基督教大学に所属なさっている小澤先生によるお話です。小澤先生は、外部からこの立教大学の日本語教育プログラム評価に携わるメンバーとして、長尾先生の大学評価に関する講演内容と照らし合わせながら次の2点について発題してくださいました。「広報にインパクト評価の要素を盛り込むとは具体的にはどのようなことか」と、「教育的介入のインパクトを見るうえで、時間的な要素や外部要因をどのように扱えば良いのか」についてです。まず一つめの発題に関して長尾先生は、広報にインパクト評価の要素を取り入れるということは、大学がどう思っているかは関係なく、日本語教育プログラムを行うユニットが独自に行うことができる、とケーススタディの例を挙げながら述べられました。そしてこれは学内における日本語教育プログラムや日本語教育センターの認知を高めるための活動とも関連付けられると話されました。二つ目の発題に関しては、時間が全ての妨げとならないことを主張され、例えば5年前に卒業した学生の状況を調べたりするなどの後追い実験の可能性を述べられました。さらにセンターが留学生を理解するという意味で、日本語教育プログラムを受ける学生がどのような生活をしているか、本人のモチベーションはどのようなものなのか、というようなこまめに評価できるところから行い、データを蓄積し、そして蓄積があることを大学側に発信してゆくことが重要だとまとめられました。また、池田先生からは、立教の日本語教育センターで日本語を学んだ留学生がどうなったかということのみではなく、その留学生がどう感じたかも重要であると述べられました。留学生が立教大学の日本語教育について何か満足感や達成感を得て、帰国してから先生や後輩に「あそこのカリキュラムは良かった」と言うことで、海外における立教大学の日本語教育センターの評判と認知度を高めてゆけるのでは、という大変興味深いお考えでした。

今回のシンポジウムには、様々な大学の日本語教育に携わる方々も出席されていました。全体討論では参加された方々が所属する大学における日本語教育プログラムの現実や取り組み、問題点についてシンポジウムのテーマでもある「プログラム評価」と絡めながら情報の共有や活発な討論が繰り広げられました。私はこのプログラム評価に関して恥ずかしながら知識が足りず、話についてゆくことで精いっぱいでした。しかし今後の大学の国際化を考えたときに、日本語教育センターが果たす役割の重要性とその学内への認知、そして内輪事で終わらない有用性のあるプログラム評価が、学内における日本語教育プログラムの活性化と海外からの留学生誘致にとって一つのカギとなると思いました。

  立教大学が海外の大学や留学生から見て、留学先として魅力的な大学として映るために、本日の講演で述べられたプログラム評価は、今後さらに積極的に取り組まれてゆくべきものだと感じました。長尾先生、池田先生、小澤先生からの貴重なお話、そして会場にいらっしゃった方々も含めた討論で、「大学の国際化」とは何か、またそういったコンテクストにおいて日本語教育センターや日本語教育プログラムはどう貢献してゆけるのかについて考えさせられ、大いに勉強させていただくことができました。

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