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講演会・シンポジウム

日本語教育センターシンポジウム2019

日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。

多様な日本語力の学部留学生の受け入れと大学での学び

日  時 2019年12月7日(土)14:00~17:00
場  所 立教大学 池袋キャンパス 11号館 A304教室
主  催 日本語教育センター
パネリスト 丸山 千歌
(日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
韓 志昊(観光学部教授)
厳 成男(経済学部教授)
浜崎 桂子(異文化コミュニケーション学部長、同学部教授)
上西 智子(経営学部 兼任講師)
池田 伸子(国際化推進機構長、異文化コミュニケーション学部教授)
コーディネーター 丸山 千歌
(日本語教育センター長、異文化コミュニケーション学部教授)
司  会 小林 友美(日本語教育センター 教育講師)

*シンポジウム冊子はこちら

レポーター:異文化コミュニケーション研究科1年次 ベンビ ラマダニ ムリア

学生レポート

はじめに

今回で第8回目となる2019年立教大学日本語教育センターシンポジウムは、「多様な日本語力の学部留学生の受け入れと大学での学び」というテーマで行われました。立教大学で多様な日本語力の学部留学生、いわゆる4年間立教大学で学んで卒業していく学部留学生をしっかり受け入れていくことは、立教大学がこれからの成長し続けていくためにとても重要なことであります。今回のシンポジウムでは、それに関連してそれぞれの学部での日本語教育プログラムや課題、そして先生方の経験と事例から学ぶことができ、これから立教大学が目指しているグローバル化大学のやるべき課題を知る大変貴重な機会となりました。

第1部では、6名の先生方がご講演をなさいました。日本語教育センター長・異文化コミュニケーション学部教授の丸山千歌先生、観光学部教授の韓志昊先生、経済学部教授の厳成男先生、異文化コミュニケーション学部長・同学部教授の浜崎桂子先生、経営学部兼任講師の上西智子先生、国際化推進機構長・異文化コミュニケーション学部教授の池田伸子先生が、新しいタイプの学部留学生の受け入れのための日本語教育についてお話しになりました。第2部では、教育部局と関連部署からのコメントがあり、質疑応答と全体討議が行われました。

新しいタイプの学部留学生の受け入れのための日本語教育

立教大学日本語教育センター長
異文化コミュニケーション学部
異文化コミュニケーション学科教授 丸山 千歌先生

第一部では、はじめに、立教大学日本語教育センター長で異文化コミュニケーション学部教授の丸山千歌先生より、「新しいタイプの学部留学生の受け入れのための日本語教育」というテーマのもと、スーパーグローバル大学創成(TGU・Top Global University Japan-文部科学省によるスーパーグローバル大学創成支援事業)、多様な日本語力をもつ留学生の受け入れ、そして、それぞれの日本語力に合わせた日本語教育プログラムについてお話がありました。

立教大学は、国際化の面で2014年からTGUに取り組み、2024年までに2千人を受け入れる目標を設定し、2019年時点では約1千人を受け入れたと述べられました。現行の外国人入試に加え、これから新しい留学生の受け入れが必要になるというご指摘がありました。

学部入学前予備教育において高い実績をおさめている東京外国語大学の例等を参照しながら、立教大学での受け入れについて検討がなされています。具体的には日本語力の多様な留学生を対象に9月入学を開始し、渡日不要の選抜と日本語力に偏らない選抜を行う計画で、留学生を育て、その取り組みが大学の学びを豊かにする方法を考えているそうです。日本語クラスについては、それぞれの日本語力レベルに応じて3月までの半期で日本語教育プログラムのクラス編成を行うことで、この新しい留学生の受け入れを実施するということです。

大学・学部への着地支援に重点を置いた集中日本語教育では、集中日本語以外に、「やさしい日本語」による科目の履修を前提にして、学部に所属する学生として生活を整えるために様々なことを学ぶといった取り組みも考えていると述べられました。このプログラムの重点は①集中日本語教育、②レベル別クラス編成(英語トラック向け日本語クラス、日本語トラック向け日本語クラス)、そして③学部との連携・チューターの活用による「専門の日本語」であるということです。

最後に、立教大学の課題としては次の4つが挙げられました。①日本語学習の成果、②学部との連携、③チューターとの連携、④日本語力が多様な留学生(文化・社会背景が多様な留学生)を迎えることが立教の学びの豊かさにつながると実感できるような実践と成果です。

留学生と日本人学生の協働がもたらす学び―短期日本語プログラムの実践―

立教大学観光学部
観光学科教授 韓 志昊先生

各学部からの登壇者として、観光学科教授の韓志昊先生より、「留学生と日本人学生の協働がもたらす学び―短期日本語プログラムの実践―」というテーマのもと、観光学部と日本語短期プログラムの交流活動の報告、そして観光学部生の経験をお話しいただきました。

色々な写真を用いて、2017年に担当したフィールドトリッププログラムの経験についてお話がありました。このプログラムから学んだことは、国際化とは英語能力を上げることだけではなく、早期から経験を重ね多様性に慣れること、そして身近にいる、自分と背景が異なる人たちを恐れずにより多くの人に触れることで免疫を上げることだと述べられました。また、短期日本語プログラムの利点として、次の3点を挙げていました。①日本や日本語に興味のある外国人学生が2・3週間のプログラムで日本の大学生活を経験できること、②観光学部の学生にとっては、英語が中心の経験より日本に来ている学生に対して日本語を教える方が負担は軽くなること、③海外経験のない学生により有効だということです。また、教員の希望としては、短期プログラムに参加し、特別外国人学生のチューターを1学期間担当する経験が自分も留学したいという気持ちに繋がってほしいと語っていました。

その後、観光学部一年生の松尾美嶺さんから7月に実施された短期プログラムの日本語ボランティアとフィールドトリップ引率の経験と、その後の大学生活についてお話しいただきました。自ら積極的にコミュニケーションを取る重要さや楽しさ、失敗した時よりもその後の対応の大切さを学び、短期日本語プログラムの参加から始まった経験を通して、海外がとても身近になり、新しいことを学べると述べられました。このプログラムは貴重な経験であり、参加後、大学生活にとても大きな影響を与えたということです。

留学生と日本人学生の協働がもたらす学び―短期日本語プログラムの実践―

立教大学経済学部
経済政策学科教授 厳 成男先生

各学部からの2人目の登壇者として、経済政策学科教授の厳成男先生より、「留学生と日本人学生の協働がもたらす学び―経済学部の実践―」というテーマのもと、経済学部における外国人留学生の実態、課題の改善対策、そしてグローバルキャンパス化についてお話しいただきました。

経済学部では2015年までは、留学生の入学者が少なく、2016年から増え始めたそうです。2017年に留学生が31人、そして、2018年には24人と入学者が増えたことにより、日本語能力の多様性について認識するようになったことが述べられました。留学生の学びと生活の実態を把握するために、留学生に対して4、5人ずつ面談をし、アンケート調査を行った結果、成績が全体的に下回っていることがわかったそうです。さらに、日本人とのネットワークが浅く留学生同士で集まっている時間が長いこと、そして、日本語能力に少し難があるため、大学生活に困難を抱いていることがわかったということです。

実態把握の上、教員は問題点を改善するための様々な対応を行い、今後の課題として、日本語授業と漢字教育開発や国際化推進委員会の設立など、日本語能力と交流を向上するための改善対策を立てたとお話しいただきました。留学生の学生生活をサポートするための経済学部「留学生サポートプログラム」を開始し、プログラムの活動について具体的にご説明してくださいました。その一方、本当にサポートを必要としている留学生がこういった活動に参加しないことへの対応、そして活動の組織体制の構築は今後の課題事項であると指摘なさっています。

最後に、留学生と日本人学生の協働がもたらす学びの未来像について、経済学部のグローバルキャンパス化とその課題、日本人の人口動態や労働力構造の変化等、移民(労働力)の受け入れ拡大の問題点、留学生の受け入れや留学生向けの教育の提供(日本語+専門知識+日本社会の理解)、そして外国人労働者受け入れ拡大の政策の代替案の可能性についてお話しいただきました。

留学生と日本人学生の協働がもたらす学び-異文化コミュニケーション学部の実践-

立教大学異文化コミュニケーション学部長
異文化コミュニケーション学科教授 浜崎 桂子先生

各学部からの登壇者として、異文化コミュニケーション学部教授の浜崎桂子先生より、「留学生と日本人学生の協働がもたらす学び―異文化コミュニケーション学部の実践―」というテーマのもと、CIC(College of Intercultural Communication/異文化コミュニケーション学部)の理念、留学生受け入れのCICの「多様性」、共に学ぶための初年度教育の仕組み、留学生と日本人学生の協働のための仕組み、社会への発信時のキャリアサポートに関してご講演いただきました。

異文化コミュニケーション学部での多様な留学生の受け入れに関連して入試方法が紹介されました。日本語筆記試験と面接で行われる秋季入試と、日本語の他(日本語能力はN2からN3に引き下げ)に英語能力の証明が必須となっている書類選考、そして海外指定校や国内インターナショナルスクールからの留学生受け入れなどについて説明がありました。

その次に、日本人学生と留学生が共に学ぶための仕組みとして、初年次の「基礎演習」の授業、「Learning through discussion」というお互いに学び合うメソッド、サポートバディとその課題についてのお話がありました。4年ぐらい前から、「基礎演習」の授業では、学期はじめに日本で育っている学生が留学生のサポートバディになるサポートバディ制度を作ったと述べられました。留学生にとってはサポートがあることによって自信をもって授業に臨むことができ、そしてバディにとっては重要な学びの機会になるという利点があります。

また、社会の多様性を「知る」「わかる」ために、外国人学生の学習支援、日本在住の外国人向けの立教日本語教室、小中学生が英語で活動するEnglish Camp、そしてコミュニティ通訳・翻訳RiCoLaS、という4つの社会連携活動を行っているとお話しいただきました。もともと留学生のために作った活動ではなかったのですが、この活動では留学生の強みを生かすプログラムになり、留学生に自信を持たせることができると述べられました。この活動から様々なプロジェクトが生まれたそうです。たとえばは「フードダイバーシティ」をテーマに行った講演会で、「HALAL MAP IKEBUKURO」という地図が作成されています。

最後に、学部の中では、日本での就職を現実的な選択肢として考えてもらうための「キャリア実践演習」という授業を展開したと述べられました。また、2017年より年に1回、学部の多様性を創る試みについて発信する場「キャリアシンポジウム」を開催しているとのお話があり、シンポジウムの仕組みについて詳しくご説明いただきました。

留学生と日本人の協働がもたらす学び―学部を超えた実践―

立教大学経営学部兼任講師
経営学部海外インターン短期留学担当 上西 智子先生

5人目の登壇者として、経営学部の海外インターン短期留学担当の上西 智子先生が「留学生と日本人の協働がもたらす学び―学部を超えた実践―」というテーマで、異文化コミュニケーション学部と協力して実践した異文化セッションについてご講演なさいました。

昨年行われた長期海外インターンシップ・プログラムに参加した学生に対して、どのように生活と業務を学んだかに関するインタビュー調査を行い、その結果として、インターン生が感じた問題点について述べられています。それはインターン生が帰国後、海外で学んだことを共有して話そうとしても、実際に経験したことがない人には中々わかってもらえないと感じ、海外で学んだことを話さなくなったということです。海外で学んだ経験を日本人が分かるように説明するレベルまでの概念化ができていないのだというお話でした。そのようなことに気づいたときに、丸山先生と意見を交わす機会があり、インターンを経験した学生と留学生を引き合わせて、共感を持って何かの学びを語り合える場を作ってはどうかということになり、異文化コミュニケーション学部の正規留学生による異文化セッションを行うことになったそうです。目的は、海外インターンの出発前に日本人学生の異文化理解に関する気づきを醸成させるとともに、外国人留学生と交流することです。

授業を受けた学生は、当たり前ではないことを理解したり、留学生から説明を聞いて具体的に想像したりできるようになり、派遣先での行動がよりスムーズになった、また、マイノリティー感と抵抗感がなくなったといった変化があらわれたそうです。異文化理解を深めるためには体感が必要で、異文化に関して日常的に考えている留学生から学び、日本の学生も異文化について日々考えることが重要と述べられました。インターン経験者は、このセッションにファシリテーターとして関わることで、知識を活用できた、免疫がついたと感じているそうです。また、日本人学生は日本人が行う授業では得られないリアリティーを感じることができた、このようなセッションを続けてほしいと言っています。立教大学に入学する学生のほとんどは海外に興味があるため、海外留学に関心を持っている学生が多いと考えられます。そのため、関心を持たせるために入学式の頃の4月にセッション行うことが一番適切であるとの判断に達したと述べられました。

この授業から得られるメリットとして、次の4点が挙げられました。①正規学部留学生は自分たちの持っている情報(背景、文化)を共有できて自信をつけることができる、②日本人学生は文脈理解ができ、日本人に分かりやすく説明することができ、協働や気づきを生かせる、③スチューデント・アシスタントにとっては、海外インターン経験を共有できない思いを持っていたが、同じ国でインターンした学生と話せてお互いに共感する話ができる場になる、④履修生にとっては出発前に知識をつけられることです。

多様な日本語力の学部留学生の受け入れと大学での学び―展望と課題―

立教大学国際化推進機構長
異文化コミュニケーション学部
異文化コミュニケーション学科教授 池田 伸子先生

6人目の登壇者として、立教大学国際化推進機構長の池田伸子先生は「多様な日本語力の学部留学生の受け入れと大学での学び―展望と課題―」というテーマで、立教大学が目指しているグローバルな国際化についてご講演なさいました。

立教大学は建学の精神である「PRO DEO ET PATRIA=神と国のために」を持ち続けながら、2024年を目指して「Rikkyo Global 24」というテーマのもと国際化を推進し、RLS=RIKKYO Learning Styleを実現し、一人ひとりの個性を重視した人間教育で、21世紀に必要とされる人材の育成に取り組んでいるとお話しくださいました。その人材とは、国境を越えて流動化する会社に柔軟に対応し、新しい仕組みを生み出していく変革力、それから、豊かなコミュニケーション力で異なる文化・習慣を持つ人々と共に課題を解決する共感協働力、そして地球規模の困難な課題に向き合い、問題の本質を理論的に解明する思考力といったソフトスキルを持った新たなグローバルリーダーであると述べられました。

新たな正規学部留学生の受け入れ、日本語に偏らない外国人入試などを全学的に進めていくためには、様々な改革が必要であり、その一部として次の3点を挙げていました。①入学後の集中日本語教育、②同時に英語展開科目の充実化、③立教大学ならではのきめ細かいキャリア教育です。

一番大切なのは、日本人と留学生が協働する仕組みを作り、大学全体の持続的成長につなげることであり、このために必要な仕組みとして、次の5点が挙げられました。①学部学科のカリキュラムの一部として取り組まれた英語プログラム、②既存科目の教育言語の切り替え、③学部と密接に連携した英語教育、④学部と密接に連携した日本語教育、⑤個性を生かした協働の仕組みです。

立教大学が持続的に成長し続けるために、カリキュラム、教育内容、教務、学生支援体制の「真の」国際化が必須であり、その重要性、必要性と危機感の共有が必要になると述べられました。さらに、学生の学びや成長のような見えにくい部分を見えるようにする仕組みの構築・強化、そして自発的な取り組みの促進が必要であるとお話しいただきました。

全体討議

最後に、今回のシンポジウム内容を踏まえて、全体討議が行われました。まず、フロアからバディが教える内容、二言語利用情報の実態、そして、効果の見える化に関して質問がありました。効果の見える化のための評価方法にはルーブリック、学生アンケート、学生のポートフォリオを使うことなどがあり、できる限り様々な根拠を使い、説明して説得していく形で進めると浜崎先生にご回答いただきました。

また、正規留学生の日本語能力をJLPTのN2からN3へ基準を引き下げた場合、入学後の大学生活で様々なトラブルに直面しないようにどのような工夫をするかという話になりました。立教大学では、言語Aを英語に、そしてほかの言語を言語Bとして選択することができ、2016年からは、日本語がある程度のレベルに達していない学生は言語Bとして日本語の授業を取ることになりました。科目や論文を日本語必須にし、卒業論文を書けるまでに日本語能力を向上させることになっていると浜崎先生にご回答いただきました。日本語教育センターとして、サポートを必要としている留学生に対し様々なプログラムや企画で日本語能力向上に取り組むという結論になりました。

最後に、社会学部教授、国際センター長の黄盛彬先生から、留学生だった先生のご自身の経験や日本と韓国の留学生に関するトレンドをお話しいただきました。留学生数では、現在韓国は14万人程度、これに対し日本は30万人程度です。日本での留学生の内訳は、日本語学校は9万人以上、そして専門学校は5万人以上いるということで、30万人のうち、正規課程の学生数は実はそれ程多くありません。その一方で、2005年頃、韓国では留学生は2万人もいませんでしたが、今は14万人になりました。14万人の内、8、9万人は正規課程の学生です。割合から見れば、韓国の方がやや多いことになります。

さらに、韓国のソウル市内の中央大学には約1000人の留学生がいるそうです。日本の早稲田大学では5千人超の留学生がいます。しかし、立教大学の留学生はそれほど多くいません。様々な問題に直面したうえで積極的に留学生の人数を増やす大学の先生方のお話を聞き、立教大学にもドラスチックな変化を要求しながら様々なことを考える必要があると述べられました。様々なことを学べるシンポジウムになったと感じました。

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