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ホーム>イベント・事業報告>講演会・シンポジウム 講演会・シンポジウム日本語教育センターシンポジウム2016日本語教育センターの活動の社会還元として、またセンターのFDの一環として、講演会、シンポジウムを開催しています。 大学の国際化と日本語教育 ―発展的で持続可能な学部・研究科との連携を目指してー
*シンポジウム冊子はこちら レポーター:異文化コミュニケーション学部4年次 大野綾香 学生レポートこんにちは。学生レポーターの大野です。今回で第4回目となる2016年度日本語教育センターシンポジウムでは「大学の国際化と日本語教育―発展的で持続可能な学部・研究科との連携を目指して―」をテーマに講演及びディスカッションが行われました。2016年度12月現在、立教大学では過去最多となる743名の留学生が学んでおり、キャンパスの風景も今後さらに多様性に富んだものとなっていくでしょう。本シンポジウムの第一部では5人の先生方から、学部・研究科の日本語教育及び日本語教育センターとの連携の可能性についてのご講演があり、第二部では第一部の内容を踏まえてのディスカッションが行われました。 第一部ではまず、東條吉純先生より本学日本語教育センターの目標・現状と課題についてのお話がありました。2014年に文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」に採択された本学では「Rikkyo Global 24」を設けるとともに、留学生数を全学生の10%にすることを掲げており、2024年には2000名の留学生の受け入れを目標としています。大学の国際化の要素として①学生の海外への送り出し②留学生の受け入れ③大学の国際化対応の3つが挙げられ、現在の日本語教育センターの取り組みとして以下の6点についてご紹介がありました。
日本語教育センターと各学部・研究科が連携することの効果としては、留学生の立教大学への入学やその先に日系企業等へのキャリアパスも見込めることが挙げられ、日本語教育センターと学部・研究科のネットワーク構築の重要性が示唆されました。 今後の展望として、①大学の国際化を進めていくためには大学内の各現場で文脈を共有することが大切であるということ、②大学組織を制度だけでなく機能として捉えるという視点から、日本語教育センターが各現場とつながるファシリテーション機能を持ちうることが述べられました。 スコット・デイビス先生からは、国際経営学研究科のMIB(Master in International Business Program)コースでの取り組み事例についてのお話しがありました。このコースでは「日本語のない環境でグローバル環境を保障する」というコンセプトのもと、授業はすべて英語で行われ、多様性に富んだ、動くコンテクストに合わせられるビジネスパーソンの育成が目指されています。 企業の求める学生の教育・就労のレベルと学生の卒業後のキャリアを踏まえたカリキュラム編成により、二年間でビジネスの基礎からM&A 提案等の高度なプロジェクトまでを遂行できるプログラムの他、「企業幹部候補を想定した高度な日本語運用能力を育成する」ことを目的とした日本語教育が提供されています。ビジネスに特化した独自の日本語プログラムを取り入れたことにより、文脈を踏まえて深く物事をとらえなおすための「文脈力」と「共感力」の両方が学生に身についたそうです。 日本にいながら英語を土台にして学ぶプログラムの教育効果を最大限にするためには、専門的な日本語を学ぶプログラムの整備が不可欠であり、またそうした日本語教育プログラムが付加価値となりコース全体のブランディングや差別化につながるとの結論が述べられました。 山中伸彦先生からは、ビジネスデザイン研究科の概要と留学生に対する教育プログラムの現状と課題についてのお話しがありました。日本の企業経営・法・政治などの社会的コンテクストを学べる科目から編成される「モジュール」による教育プログラムが設置されており、日本語教育センターと研究科の連携により提供されています。 入学する留学生数は増加する一方、課題として比較的年齢層が若く、就労経験の浅い留学生のプログラムに対する需要が十分にないことや、こうした留学生と日本の社会人では社会経験、日本語能力、ビジネスコンテクストの違いがあるため、社会人を交えてのディスカッションのようなグループ学修の際に困難が生じているという問題点が報告されました。 今後の課題として、①プログラム運営における研究科の負担を考慮した持続可能なシステム構築②日本語能力の向上と専門知識の習得を連係させ、日本語教育プログラムを適切に位置づけること③日本語を論理的に使える能力の育成が挙げられ、留学生と日本社会をつなぐための教育環境の構築には多くのステップが必要であると学ぶことができました。 豊田三佳先生からは、観光学部の国際化と現在の課題についてご講演頂きました。観光学部が設置している海外の協定校との相互派遣プログラム「言語と文化現地研修」の紹介の他、立教大生と提携先大学の学生それぞれの事例とともに今後の課題についてのお話しがありました。一つ目の事例として、日本人学生が本来の授業を欠席してボランティアに参加するケースがあることから、 現在ボランティアの単位化が検討されているのだそうです。また、もう一つの課題として日本語クラスの多文化対応が挙げられました。 協定校の日本語クラスで宗教の違いから学生と教師の間ですれ違いが起きたエピソードが紹介され、学生の多様な宗教や文化に対応した授業デザインの難しさを改めて考えさせられました。 異文化コミュニケーション学部の池田伸子先生からは、学部の目指す留学生教育と今後のカリキュラムの在り方についてお話しいただきました。現在異文化コミュニケーション学部と日本語教育センターが連携して行われている取り組みとして日本語教員養成プログラム、プログラム内で行われる日本語教育実習の学生参加促進、またプログラム参加学生のSA(Student Assistant)、TA(Teaching Assistant)への活用のほか、
専門科目での教師派遣や日本人学生と留学生が共に学ぶCultural Exchangeという授業の取り組みが紹介されました。
「Solutions in Diversity」をキーワードに掲げる異文化コミュニケーション学部では、全員に海外留学研修が義務付けられています。「異文化の中で生活することにより学生が既に持っている常識をゼロにする」ところにこの研修の意義があると述べられました。留学生教育に求められる変革として①入試の多様化②留学生の応じたプログラムやカリキュラムの開発③学部・研究科のプログラムに対応した日本語科目選択④キャリアを見据えた日本語プログラムの設置⑤渡日前後の留学生に向けた日本語特別プログラムの設置⑥留学生の卒業要件単位の見直しを述べられ、
大学として増加する留学生に対応するためには日本語学習経験のない学生が入学する前提でのコースデザインが重要であるとのご指摘をされました。 第二部のディスカッションではまず、奥村隆先生より「顔が見えるプレゼンテーション」と第一部の先生方のご講演を振り返られました。大学の国際化の一つの課題として、「各現場の国際化の状況が見えない」ことがあり、こうした場で各現場の声を可視化することが東條先生のご講演でご提言のあった「文脈の共有」につながるのだと思いました。次に、小澤先生より、各現場での発見や課題を大学運営に反映させていくためには、それぞれの声をまとめ、みんなの声として持っていくことが大切だとのご指摘がありました。そうした取り組みから、他大の持っていない立教のモデルを作ることができるのです。 本シンポジウムに参加して、各学部や研究科が、大学全体の中でそれぞれの役割とミッションを持って教育のデザインがなされていることを知りました。私は日頃、学生として立教大学で学んでいますが、学生が学んでいるカリキュラムを受け手ではなく作り手の視点から見ることは新鮮で、自らの学びの環境を客観的に見る機会になりました。自身が「まだまだ学びが足りない、この点を学びたい」と感じる時、それは学生生活において問題にぶつかった経験に基づくもので、必ずしも今後自身が出ていく社会のコンテクストを踏まえたものではありません。そのため、社会の視点から自身の学びを捉え直すことは、卒業後に社会に対し自分がどんな貢献ができるのか、また求められるのかを考えることでもあり、重要なことだと思います。また、山中先生のご講演で紹介されていたように、大学から教育プログラムが提供されていても学生がそのプログラムでの学びの必要性を十分に認識しておらず、需要がない場合があるとの話を聞き、プログラムやカリキュラムの目指すゴールを学生自身がもっと認識する必要があるのかもしれないとも感じました。ここで得た学びを、今後還元して行きたいと思います。 |